本研究の第一の課題は大腸菌のstationary phaseでのみ出現する100S(70Sダイマ-)の構造を解明することである。そのため我々が発見したE蛋白質が100Sに特異的に結合する性質と関連付け、Eが70S間のコネクタ-として働くという作業仮説を立てて電子顕微鏡による観察を行った。その結果100Sは、2個の70Sが、30S同士を向かい合わせる形で、たてに重なっており、70S同士は、その接触点を固転軸として二回回転対称を示すことがわかった。もしも上記の作業仮説が正しければ、Eは50S側に結合していることと矛盾なく説明するためには70Sか横に並んでいる場合が最も考え易い。従って得られた結果は作業仮説が成立しないことを示唆している。100S形成にはEは必須であるが、それ以外の別の容体かあるいはコンフォメ-ション変化などの70S自身の運動かか必要である可能性が高い。とはいえ、50Sがもつ3本の突起のいずれかにEが結合しているとすれば30Sをとび越えて、Eが50S同士を直接架橋する可能性は残されている。この問題を前進させるためには二価性試薬を用いたトポグラフィ-かEの抗体を用いた免疫電顕が有効であり、現在その準備にとりかかっている。 第二の課題は100S形成のin vitro assay systemを確立することであるが、リフォ-ム顆粒から脱離したEと可溶化した状態で取扱えるようになり一歩前進したが、まだin vitroでの100S形成に功成していない。 第三の課題は100S形成と外的環境の変化との関係解明であるが、変化する外的環境の中、pHやO_2の低下が部分的に100S形成を促進させることがわかったが、決定的要因はまだ見出されていない。後二者は今後に残された課題である。 尚、電顕操作には京大(理)藤沢久雄教授の、又Eの形質発現の解析には国立遺伝研の石浜明教授の協力を得た。
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