フリーラジカルの構造決定はおもにESR(電子スピン共鳴装置)スペクトルの解析から行なわれてきた。しかしESRスペクトルから得られる情報のみではそのラジカル種の構造が決定できない場合があり、その他の実験手段の併用によりフリーラジカルの構造決定法の開発が待たれていた。そこで申請者はHPLC/ESR(電子スピン共鳴装置を検出器とする高速液体クロマトグラフィー装置)とLC/MS(液体クロマトグラフィー/マススペクトロメター)を併用する新しいフリーラジカルの構造決定法の開発をおこなってきた。 第一ステップとして、HPLC/ESR法を用いてラジカルアダクトを精製し、そのCIマススペクトルの測定を行なった。リノール酸、リノレイン酸、アラキアドン酸と大豆リポキシゲナーゼとの反応時に生成するフリーラジカルの構造決定をスピントラップ剤4-POBNを用いて行ない、ペンチル及びペンテニルラジカルであると決定できた。 しかし不安定なラジカルアダクトにはCIマススペクトルの測定は不向きであったので、第二ステップとしてLC/MS法によるマススペクトルの測定をおこなった。不飽和脂肪酸と大豆リポキシゲナーゼの反応時に生成するフリーラジカルをスピントラップ剤としてニトロソベンゼンとMNPを用いて行ない、それぞれの脂肪酸のエポキシラジカルの生成を明らかにした。 最終ステップとしてHPLC/ESRとLC/MSを直列に接続し、ESRによる検出とマススペクトル測定を同時に行なうシステムを開発し、種々のヒドラジン誘導体ラジカルの構造決定を行なった。
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