[目的] 国際化の進展につれ、海外・帰国子女に関する教育研究が次第に着手されるようになってきている。これまでに、科学研究費の補助金の交付を受けて、帰国児童・生徒を対象に、家庭科に対する意識や学習経験および学習の定着度などについて調査研究を行ってきた。本年度は、帰国子女教育に関する資料を収集するとともに、先に実施した一連の研究によって得られた知見をふまえて、海外生活経験を有する帰国子女の保護者を対象に家庭科教育に関する意識を調査した。 [方法] 1991(平成3)年10月〜1992(平成4)年2月にかけて、全国の帰国子女教育研究協力校39校(小学校19校、中学校11校、高等学校9校)の帰国子女の保護者650名を対象にアンケ-ト調査を行った。調査項目の概要は次のとおりである。(1)渡航時の状況について(2)海外での子供の家庭生活について(3)海外での学校生活や家庭科教育について(4)家庭科に対する意見について [結果] (1)在留国は世界各国に点在しているがアメリカが最も多く、次いでイギリスなどのヨ-ロッパであった。また、海外赴任に際し、現地の生活や子供の教育に対する不安感も表出されていた。(2)子供の家事の役割分担に関する意識の低さが示された。また、約70%が日本の生活や習慣などを配慮して養育していた。(3)家庭科の家習経験を有する子供は約40%で、そのうち約80%が調理などを家庭で実践していた。(4)海外生活経験が家庭科の学習に役立つと回答した者が、約31%であった。また、学習方法では、小・中・高校とも男女とも同一内容で共に学ぶのが望ましいと回答した者が約30%であった。 諸般の事情により、本年度は十分に目的を達成できなかったことを反省している。しかし、新たな課題を見出すことができたので、次年度は、帰国子女の家庭科教育に寄与できるよう万全を尽くす所存である。
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