本研究では、帰国子女の家庭科教育に関する調査研究の一環として、平成3〜5年にかけて3つの観点から調査を実施した。第1に、帰国子女の保護者を対象に、在外中の保護者や子どもの家庭生活の実態について明らかにした。また、子どもが受けた海外における家庭科教育への関心の程度や家庭科に対する教科観について特徴を浮き彫りにした。第2は、日本人学校在学の児童・生徒の保護者を対象に、家庭生活の実態や養育態度および家庭科に対する教科観について実態を明らかにした。第3は、日本人学校の児童・生徒を対象に家庭生活の実態や家庭科の学習状況および家庭科に対する教科観について調査した。得られた知見の一例を集約すると次のようである。帰国子女の保護者は、海外における日常生活にも比較的高い満足感を示し、海外生活経験は家庭科学習に役立つことを、他の二者よりも認めていた。日本人学校の保護者は、子どもによく家事分担をさせており、生活の自立を図るよう心がけていた。また、家庭科は日常生活に役立ち、男女とも学習する必要性を強く認めていた。 さらに、異文化体験者の家庭科に対する教科観を分析したところ、4つのタイプに類型化できた。 この調査研究を通して、異文化体験者の家庭生活の実態や家庭科の教科観の特徴が明らかになった。海外・帰国子女数の増加に伴い、教育問題も深刻化していくので、一般生徒と帰国生徒が相互啓発しながら学習していく、家庭科指導の研究とその支援の必要性を確信した。今後も、本研究を礎として海外・帰国子女をテーマとした研究を継続的に進めていきたいと考えている。
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