本研究では、聴き手が与えられた音列をどのように体制化・構造化するのか、またその結果どのような音列を“メロディらしいメロディ"として認識することになるのか、その認知過程を記号処理的モデルとして実現することを目的とした。 2年度の間の成果は、大きくいって、以下のようなものであった。 1.従来の研究成果を踏まえ、メロディ認知の過程には“調性的体制化(tonal organization)"と“リズム的体制化(rhythmic organization)"の2種類の構造的処理が存在することを確かめた。 2.調性的体制化の過程およびリズム的体制化の過程をそれぞれ独立的に扱うこととし、それぞれの過程に対するプロトタイプ的モデルを計算機上に具体化した。 3.2に記したモデルの心理学的妥当性をチェックするため、人間の調性的体制化の過程およびリズム的体制化の過程を観察・推測し得る心理学的実験を行い、そこから得られた人間の反応データとモデルの振る舞いとを比較・検討した。また、その考察の結果から両モデルの改良に努めた。 4.調性的体制化の過程とリズム的体制化の過程の相互作用のあり様を探る心理学的実験を行い、両過程間の関係について分析・考察を進めた。
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