視野内の情報を広い範囲にわたって素早く、注意を伴わずに粗く処理するモ-ドである前注意的処理過程の特質と、その神経生理学的基盤を検討するのが本研究の目的である。 Livingstone & Hubelによって明らかにされた視覚系の下位システム、大細胞系に関する研究資料を広く収集した結果、その中心的機能は、視覚情報から広い範囲にわたり共通成分を抽出して、それらの連結および補間を行うことにあると集約することができた。概説を電子情報通信学会誌vol74、および「認知科学のフロンティアI」(サイエンス社)に載せた。 カラ-グラフィックコンピュ-タとパ-ソナルワ-クステ-ションを援用することにより、視覚刺激提示を等輝度・色度差条件で行う装置を構成した。この装置を用いてテクスチャ-を観察すると、特に、領域の境界に知覚される主観的輪郭線が消失しやすいことがわかった。同様な現象は、テクスチャ-パタ-ンを持続的注視しても現れることが見出された。 また、等輝度・色度差条件ではファントム錯視は成立せず、領域連結の機能が弱まることがわかった。また、領域の空間周波数が高く、時間周波数が低いほど、連結機能の低下がみられることも報告した(日本心理学会第55回大会発表)。 大域優先効果については刺激のもつ低空間周波成分カットしたり、提示時間を長くすると、消失してしまうとを明らかにし、日本心理学会第55大会ワ-クショップ「情報処理課題における全体情報と部分情報の役割(2)」で発表した。
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