研究概要 |
サッケ-ドと注意の制御の関係を調べるため、express saccade現象を利用した。これは、周辺部に呈示された刺激へのサッケ-ドの潜時が、刺激呈示に先だって凝視点が消失した場合(gop条件)に、凝視点がそのまま点灯し続けた場合(overlap条件)と比較して、反応時間が短縮するというものである。もし、注意の制御とサッケ-ドの制御とが深く関係するとすると、gop条件ではサッケ-ドと同様、注意の移動潜時の短縮が見られると予想される。ここで、注意の移動潜時とは、注意の移動を促すcueによりタ-ゲットの処理が促進されるまでの時間を言う。一般に、タ-ゲットの処理への注意の影響を正答率を指標してみる課題(知覚課題)では、注意の移動潜時は約200msec前後であることが知られている。従ってgop条件でこれよりも短かい潜時が得られれば,少なくとも、この点ではサッケ-ドと注意が共通していることを示す証拠となる。 [手続き]実験では、cueが視野の周辺部に呈示されてからタ-ゲットが呈示されるまでの時間(cue lead time)を、50msec,150msec,250msec,350msecの4種類に設定した。タ-ゲットは数字で,その正答率を指標とした。実験条件は、凝視点が手がかりとの呈示200msec前に消失するgop条件と、そのまま点灯しているoverlop条件とがあり,この両者でのcue lead timeのタ-ゲットの知覚に対する影響を調べた。なお,タ-ゲットの知覚に対する影響を制限するためバックワ-ドマスキングを用いた。 [結果]gop条件の方がより短かいcue lead timeでも,cueによるタ-ゲット知覚の影響がみられた。これは、注意の移動潜時の短縮を意味し、仮説(サッケ-ドと注意の共通性)と矛盾しない。ただし、この結果は統計的に有意なレベルに達しておらず,引き続き条件を変えて実験を継続中である。
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