設計図に表現されている情報は、a)幾何学情報、b)機能情報、c)製造情報の3つに大別することができる。本研究では、CAD図面に存在する製図誤りについて、a)とb)に関する検図に必要な知識の整理と、これらを計算機を用いてチェックするための方法との検討を行った。上記a)に関しては、機械部品の寸法情報のチェックに的を絞り、計算機援用寸法チェックシステムのプロトタイプを完成させた。b)に関しては、知識の整理と一部のシステム化とが終った段階である。以下、これらの概要を述べる。 1.設計図データの変換 DXF形式のファイルに出力されたCAD図面データから、検図に必要な図形要素、寸法要素などを整理分類して、検図システムと扱いやすいデータ構造に変換するためのソフトを作成した。なお、システム化にあたってオブジェクト指向言語C++を使ったので、クラスの多重継承等を有効に利用した柔軟性のあるデータ構造とすることができた。 2.機械部品の幾何学情報に関する検図システムの構築 余り複雑でない機械図面の三面図を対象として、寸法情報の記入誤り、すなわちa)寸法線の記入漏れ、b)記入寸法と図形座標データの整合、c)寸法の記入不足、d)寸法の過剰記入などを、チェックするシステムを構築した。 3.機械部品の機能情報に関する検図方法の検討 図面中の面取り、角丸み、キー溝、ねじ、ねじ穴などの局所的機能特徴形状を認識する知識を整理し、これらを図面(CADデータ)から判別するソフトを開発した。JIS製図規格の関係データのデータベース化は現在進めている段階にあり、これが完成すると局所的機能特徴形状の認識サブシステムと併せて、機能情報をチェックするプロトタイプシステムの構築を進めることができる。
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