本年度の研究の具体的目標は、情報のなわ張り理論の(i)中国語への適用、(ii)包括的著書(英文)の執筆、(iii)言語情報処理理論との関係に関する研究とその論文の執筆、の3点であった。このうち(i)については、中国語学者揚達氏の協力の下に研究はほぼ完成し、同氏との共著論文の執筆を残すのみとなった。(ii)については、著者の執筆を終え、ドイツの出版社からの出版を目ざして目下出版社の委託を受けた批評者により査読を受けている段階である。また(iii)についてもそのための基礎的考察を終え、論文の執筆も終えて目下出版を持っている状況である。 以上のように、本年度の具体的目標はほぼ充分に達成されたが、このほかに本研究がはじめから長期的目標としていた語用論的研究のためのデータ・ベースの確立にとって、大きな発展を見ることができた。それには、地道なデータ収集の作業の進展もあったが、ベルゲン・コーパスと呼ばれる包括的コーパスの入手に成功したことが大きい。今後は、このコーパスをデータ・ベースとしてより実証的、談話的な情報のなわ張り理論の研究を展開して行くことが可能となる。 なお本年度は、本研究補助金の他、獨協大学からも個人特別研究費を得ることができた。したがって、年度の前半は主に後者の研究費を用いた。本補助金の使用が主に年度の後半に集中しているのはそのためである。
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