赤外線カメラを使って、ヒトの顔面温度変化を測定した。今年度初期には幼稚園児と大学生を対象にして、16〜25℃の室温変化に対する顔面放射熱変化を求め、一般的な顔面放射熱の指標とした。このデ-タを元に、心理劇を行っている心理治療の場面で、患者の顔面温度を測定し、正規化された被験者の顔面温度変化をモニタ-する事によって、患者が心理ショックを受けた時の心理的変化を生理的変化として定量的に表すことに成功した(研究発表の頃)。心理的顔面温度上昇と急激な変化を伴う生理的変化との関係を調べるために、トランスピュ-タ(本補助金による)を導入し、パ-ソナルコンピュ-タで高速処理させるための、並列処理システムを開発した(研究発表2)。また、赤外線カメラ用拡大レンズ(本補助金)で顔面の微小部分を測定した。こゝでは、臨床的応用の前に、再現容易な実験系で試みるために、背筋力計を使った運動(全身性の動的運動で、腓腹筋、僧帽筋に対しては等尺性収縮となる)で、被験者の運動能力に応じた運動準備電位発生時期(運動開始前に脳電位が発生する時期)の顔面温度変化を測定した。その結果、運動に入る前に、顔面温度が急速に上昇していることが分かった(研究発表3)。 これら顔面温度上昇期に心拍の上昇はなく、体循環による顔面血流の上昇によるものではない。このことは心理劇で心理ショックを受けた時の温度上昇と同様であり、体内の生理的作用機序も、運動準備期と同様のメカニズムであることが示唆される。 次年度、ラット上頚神経節を使って、神経回太網におけるメカニズムを調べる予定である。
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