1)従来、生体の皮膚温度測定については、周囲の温度変化が大きな要因となって精密な測定が困難であり、精密な測定を行うために環境ルーム等を設備すると、経費は膨大なものとなっている。本研究を通して、簡便な方法でもヒトの顔面温度変化から精神活動を定量的に計測することが可能であることが判明した。 2)顔面の温度パターンは同一被験者でも変化するし、学生と幼児では顔面の面積も異なっている。そのため本研究では30℃以上の温度分布についての面積当たりの放射熱量を指標とした。このことは被験者の顔面がカメラに対して移動し測定面積が変化しても、単位面積に対する放射熱量に大きな影響はなく、そのため、被験者の動作を拘束する必要がない。 3)男子学生の顔面温度変化と心拍の関係を、運動時と心理劇時について比較した。運動後、一時的に心拍の増加が見られ全身の循環系が活発になり、顔面皮膚血流の増加などによって顔面温度が回復する。これに対して、顔面温度のみ上昇し、心拍変化を伴わない時、循環機能系が高進しないためか、比較的長時間高温を持続する。これは心理治療の心理ショックに対応した。 4)幼稚園園児の顔面温度測定では、全体に頬の部分が学生に比較して低温だったがパターンには差は見られなかった。 5)顔面温度のパターンから、ヒトの顔面部位については眼窩部を中心に額の部分で温度が高く。頬や鼻尖部では温度の低い人が多い。これらは顔面表層の血管分布に対応しており、赤外線画像が循環系の情報を得ていることを示している。
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