研究概要 |
本研究は、日常場面における感情反応の自由記述分析を主たる方法とする心理学実験と,日常認知におれる感情,認知,行為決定の統合的計算モデルの構築の2つの側面をもつ,心理学実験は,映画理解,広告評価,コンピュータとの交信作業などの人工的課題下での感情収集を主として実施した,感情部門をもつ認知のモデルについての理論的考察をおこない,実験的知見との対応を以下のような側面でとった.1)日常感情に関連する認知と行為的決定の性質:感情表現語を手がかり刺激とし,被験者の自叙伝的記憶の中から該当するエピソードを検索し,そのエピソードを構成する認知と行為決定の構造を尺度上の評定で記述するという実験によって,感情を中心としたエピソード記憶の構造について,認知,行為それぞれ数次元で記述できることが確認できた。この次元を計算モデルにおける説明変数として採用した.2)帰属推論と感情:日常のできごとに関する推論と,それに併存する感情を特定する実験によって,帰属論および推論が基づく知識と感情との関連に関する体系的な規則の糸を導くことができた.この規則性を計算モデルに実動化した.3)感性的推論と感情:映画を題材とする言語理解実験をおこない,その過程に含まれる感情および願望の理解過程を確認した.観察から理解,願望へと遷移する認知過程を特定し,この特徴を目標計画構造をもつ計算モデルとして実動化した.
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