(1)演奏情報の抽出 ピアノ演奏におけるぺダリング情報を記述する方法として「時間正規化ペダリング関数」の概念を導入した。これを用いると、同一曲を複数のピアニストが演奏した場合のペダリングの個人別の特徴、個人間の差異等を客観的に分析することが出来る。ショパンのワルツ第9番の一節を8人のピアニストが3種類の演奏表現(自分のベストの表現、あっさりとした、悲しみをこめて)を意図して演奏した24演奏について、正規化ペダリング関数を求め、これから距離行列を算出し、多次元尺度法によって2次元空間に布置した。さらに、この布置と演奏の印象評価との対応を重回帰分析によって求めた。その結果、ペダルの平均深さと音の響きの印象や、演奏の全体的な好ましさなどとの関係を見いだすことが出来た。以上により、ピアノ演奏におけるペダリングの個人差の問題に対する物理・心理的な一つの分析方法を提示した。 (2)計算演奏と聴取実験 この問題については、論文「ピアノの計算演奏に対する聴取者の反応ーーショパンのワルツの一節による実験」をまとめた。(日本音響学会誌49巻1号)。 (3)演奏と室内音響条件との関係 無響室録音したピアノ演奏音の短時間自己相関関数をいろいろな曲について求め、ピアノ音楽信号の音響的特性を把握する事を行ってきた。さらにこの音楽信号に対して信号処理的に第1反射音を加えたもの場合の遅れ時間の聴感上のプリファレンスとの関係を実験的に考察する研究をはじめた。
|