(1)演奏情報の抽出 前年度に行ったピアノ演奏におけるペダリング情報の抽出と個人差分析についてさらに詳しい検討を加えた結果、ペダルの平均深さの大小と聴取者が感じる演奏音の響きの大小の間に強い相関があることを見いだした。以上、ペダリングについての一連の研究成果は他に例を見ない新しいものである。これを、1993年夏のストックホルム音楽音響会議Stockholm Music Acoustics Conference SMAC93に論文発表した。 (2)インテンポ演奏の物理的速度と心理的速度 メトロノーム的な演奏(時間的に楽譜通りの音価で進む演奏)が主観的に速度一定な演奏にならないことを、典型的な一つの音素材(モーツァルトのピアノソナタK545第3楽章の一節)について示した。その内容は、職業ピアニスト達の演奏の物理的計測、および速度変化を系統的に変えた一連の自動演奏についての聴取実験よりなる。両者は定量的に良い一致を示した。これにより、インテンポ感をもつために必要な物理的速度の変動条件に一つの知見が得られた。この結果は1994年夏の第3回国際音楽知覚認知会議3rd ICMPC(ベルギー)で発表する予定である。 (3)ピアノ演奏音の自己相関特性 前年度に引き続き、無響室録音したピアノ演奏音の短時間自己相関関数を研究したが、今回はとくにアルペジオ的なフレーズと半音階的なフレーズをさまざまな演奏法で自動演奏した音素材を詳しく分析した。この結果は現在整理中であるが、これによりピアノ音楽信号の音響的特性をより精密に把握する事が出来ると期待される。
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