研究概要 |
平成4年度(2年目)も3年度に引続き,「階層構造」と「ネットワーク構造」の2つの側面で解析を進めた. (1)多階層意思決定組織内の動的機能の解明:メタ階層レベルの意思決定機構を集合論モデル上でさらに発展させ,システム内の自己改善により進化適応する過程を解析した.特に予見(anticipative)システムによってそれらが実現することに着目,システムが予見的であるための必要十分条件を明かにした.これによりモデルと現実との食い違いを解消するためのメタ機構が解明され,設備システムでの適応的な管理や複雑なシステムでの新しいタイプのフェールセーフが実現可能となった. (2)免疫ネットワークによる自律分散性の特性抽出:はじめに,免疫ネットワークの自律性,自己認識/学習機構などに着目し,その情報特性を抽出した.さらに,確率的最適化手法である遺伝アルゴリズムを取上げ,並列型遺伝アルゴリズムと免疫ネットワークシステムとの類似性に着目,それらがともに自律分散モデルとして有効であることを4つの観点から示した.現在シミュレーションにより自律・協調のダイナミクスを確認している. (3)(1)(2)の結果を総合し,意思決定組織の自律分散型ネットワークの構築に必要な要件をいくつか得た. これらの結果は,(1)を国際会議CEMIT92/CECOIA3や学会誌で,(2)を知能システムシンポジウムでそれぞれ発表し,(3)の結果を茨城大学工学部研究集報にまとめて報告した.それ以外にも,重点領域研究「自律分散システム」の公開研究集会など多くの研究会に参加,自己組織化や免疫系に関するホットな話題が得られている.これらを基に,平成5年度にはメタ階層機能と免疫ネットワークのモデルを有機的に融合化することが可能になる.
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