都市システムを考える基礎的な単位として人やものの移動を取り上げることとし、数学的には2次元における2点のペアを単位とし、都市平面を再考察した。平成3年度の成果としては以下のようなものが挙げられる。 1)一般形(多角形)の領域で近似的にではあるが、距離分布を求めることができた。特に領域が分離したもののあつまりでも求められることがわかった。 2)距離分布が最もシンプルで美しいのは、地球のような球の表面における分布であり、これがサインカ-ブに従うことが明らかにされた。現実の地球上の動きは、すべてこの分布のサブセットに対応している。 3)1)で得られた成果を用いると、交通の未発達な時代から発達した現在までを、シンプルな形で考察することができ、ある一地点の通過交通量が、交通が未発達な場合はある定数となるが、交通が発達してくると全体の規模に依存するということが数学的にも明らかにされた。このことは現在における都市をその計画可能性をも含めて考察する際、貴重な知見と思われる。 4)領域に鉄道を入れた簡単な場合について距離分布を導く理論式が得られた。これを用いると、鉄道がどの程度距離を克服しているかが明瞭になり、鉄道の入った領域がこれまでと異った空間を現出せしめていることがわかった。 5)距離分布の考え方を現実の歩行者流動調査に応用し、現実に役に立つ、分析結果を得た。
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