本年度計画で予定していた通り、凸多面体の端点を列挙するためのAVISーFUKUDAアルゴリズムを、オブジェクト指向言語Mathematicaを用いて、NeXTワ-クステ-ション上で実現した。このパッケ-ジ「VertexEnum」は、パブリックドメイン・ソフトウェアとして公開され、非常利目的の使用を前提として、米国ニュ-ヨ-ク州立大学計算機科学科から取得可能な状態になっている。すでに、20名を越える世界中の科学者から好意的な反響が寄せられている。 このパッケ-ジには、アルゴリズムの挙動を解析するためのツ-ル群が付属しており、対象となっている凸多面体のグラフ構造と、アルゴリズムが実際に辿る全域木を出力することが可能となっている。この機能を利用した全域木の構造解析を試み、アルゴリズムの並列性の高さが実験的に確認された。さらに踏み込んだ並列化効果の評価は、今後の重要検討課題である。 また、このパッケ-ジを使って、線形計画問題の準最適解の列挙、n次元ボロノイ線図の計算と作図、整数計画問題の解の導出などを試み、パッケ-ジの有用性を確認した。 今年度の検討課題であった「AVISーFUKUDAアルゴリズムの基本的アイデアの一般化」については、極めて重要な結果を得ることができた。具体的には、予想していた通り、アルゴリズムで本質的な部分が、「逆探索」という枠組みで一般化されることが確認された。そして、その探索法を使うことにより、オペレ-ションズリサ-チや計算幾何学における様々な列挙問題が効率良く解かれることがわかった。これらの問題の例としては、連結グラフの全域木列挙、n次元超平面アレンジメントにおける極大面(n次元面)列挙、平面上のn点の3角形分割列挙、平面上のn点を張る平面木列挙などがある。この結果については、来年度、国内および米国で開かれる会議で発表予定である。
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