線形計画法に代表される最適化の分野や効率的アルゴリズムを研究する計算複雑度の分野では、多くの場合、与えられた問題の1つの最適解や実行可能解を求めるための手法の開発や解析がテーマとなり、全ての最適解や実行可能解を求める列挙問題が扱われることは、その問題の理論上・応用上の重要性の高さに反して極めて少ない.本研究では、線形計画問題や組合せ最適化問題における実行可能解を列挙する問題を見直し、その解決のための一般性の高い枠組みを構築し、効率的アルゴリズムを開発し計算機上に実現することを目的と設定した.今年度の本研究で得られた成果は以下のとおりである. 1.凸多面体端点列挙のためのAvis-Fukudaアルゴリズムの考え方を一般化し、逆探索法という一般的な列挙法の枠組みを構築した.そして、この手法が様々な列挙問題に効率的に適用できることを示した. 2.逆探索法を数式処理言語Mathematicaで実現し、このプログラムを用いて、グラフおける連結誘導部分グラフ列挙、n次元超平面アレンジメントにおける極大面(n次元面)列挙、平面上の与えられたn点の3角形分割列挙などが統一的に計算できることを示した. 3.逆探索法とは異なる方法で、2つの未解決の列挙問題(凸多面体の組合せ的面列挙、2つのマトロイドの共通基底列挙)に対して、効率的な手法を開発した.
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