新製品の信頼性評価においては、試験時間と試験片の数に関する"時間と数の壁"なる制約が存在する。これらの制約下においては、試験時間の制約上限までに、開発した試験片がまったく故障しない場合が生じる。従来の"故障までの寿命時間デ-タ"、"故障の有無の0、1デ-タ"を用いた場合、デ-タは全て打ち切りデ-タとなり、推定精度を著しく低下させる。そこで、故障に向かう劣化の度合いを量る"劣化量デ-タ"に信頼性評価の可能性を見るが、本テ-マに関する従来の研究は少なく、また体系づけもなされていない。 本研究では、その一歩として故障現象の中における劣化量デ-タの位置づけを明確にし、その上で炭素抵抗器の劣化量デ-タを用い、寿命特性の推定ならびに最適実験配置の検討を行った。対象としたサンプルは炭素非塗膜抵抗器(220kΩ)であり、試験条件は温度3水準、測定は4時点、サンプル数は各水準10個である。本研究においては抵抗値の初期抵抗値に対する変化量xが規格値を越えた時点で故障とし、この故障時間の平均寿命(NTTF)の推定精度に関し考察を行った。 この結果、MTTFの推定精度に関し次のことがわかった。同じアイテム数ならば、設定温度水準差を大きくとり、推定を行う定格水準に近い水準に重みをおいた実験配置により、より良い結果が得られる。これはアイテム数の有効利用という点から、“数の壁"を越える方策となる。また、アイテム内変動を減らせば、測定時間の短縮を行っても同等の推定精度を維持できることがわかった。すなわち“時間の壁"を越える方策が得られた。 これらの成果は、劣化量デ-タの有用性を示すものである。
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