本研究では、長期的な気温、水温、地温、蒸発散量の推定、メッシュ型降雨・積雪流出モデルによる流量系列の算定、パターン分類による低水流況の分類、ファジイ推論による渇水流況の予測と渇水対策を提案しようとしたものである。各分担課題における研究成果をまとめると以下のようになる。 (i)長期気候変動下での気温・降水量・蒸発散量の推定:温暖化シナリオとして気温で+3℃、降水量±10%与え、メッシュ単位での気温、降水量、蒸発散を算定した。観測点からの推定には高度による線形回帰式での推定と積雪観測による補正を行った。 (ii)多層メッシュ法による降雨・融雪流出量の把握:多層メッシュモデルを作成すると共に、気象NOAAからの情報は、その時点での温度・積雪が判別できるので、判別誤差最小となる判別関数を求め、空間分布でのパラメータ同定に使用した。 (iii)パターン分類による低水流況の分類と流量分布の同定:パターン分類化手法を用いて、低水流況、気温を分類できた。これにモンテカルロシミュレーションを実施し、気候変動下での低水流況の知識ベースを求めた。 (iv)ファジイ推論による低水流況の予測と節水率の決定:現在観測されている低水流況と知識ベース内の代表流況と比較し、ファジイ推論によって、今後の渇水の危険度(信頼度、回復度、深刻度)を求めることができた。さらに、操作の達成度、予測精度、管理者の安心感をルールベースとしたチューニングモデルを加え、貯水池操作の効率化を図った。
|