1.大規模システムのリスク管理においては、問題解決に携わる意思決定主体は単一ではなく複数存在し、それぞれの立脚点によって価値観が大きく異なるためコンフリクトが存在するのが通常であるため、問題を単純に多目的最適問題として定式化するのでは不十分である事が明らかになった。 2.競合する評価間の相対的重要度を価値基準の異なる主体毎に定量的に評価した上で、コミュニケ-ションを通じて意思主体間でのコンフリクトの解消が順次なされていき、最終決定が得られるような新しい意思決定手法の開発を行った。 (1)価値システムの定量化に階層分析法が効果的に利用でき、意思決定主体が複数の場合に拡張して適用することにより、従来の多目的最適化手法を多目的下でのグル-プ意思決定問題に援用できる、 (2)コンフリクトの解消において、リスクコミュニケ-ションのパラダイムにおける意思決定主体間での情報の公平な共有と互譲の考え方が効果的である、 ことがわかった。 (3)(1)、(2)の知見に基づき、競合する評価間のトレ-ドオフ関係が価値基準の異なる主体毎に明示され、人間の主観的な判断として選好基準を表現するような、また適用上の柔軟性を考慮してマン・マシン間の対話過程の改善に留意した、多目的意思決定手法の開発を行った。 3.具体的応用例として、放射性廃棄物管理システムの運用計画策定について検討を加えた。そこで数値実験を通じて、提案する解決手順がリスク管理を伴う問題解決に非常に効果が期待されることを示した。また併せて、ここで出現する多目的線形計画問題の効率的数値解法についても工夫を行い、新しい計算法が大規模システムやある種の現実的な問題の解法として優れていることを示した。
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