前年度の成果をふまえるとともに、ミクロな経営行動分析に加えて、よりマクロな観点から過疎地における観光地経営の可能性を分析した。その場合、単に観光のみに焦点を当てるのではなく、過疎地域の活性化の一環としての観光対策というアプローチを重視することにした。具体的には以下のとおりである。 (1)過疎地域の活性化のメカニズムを、糧(かて)→舵(かじ)→絆(きずな)→礎(いしずえ)の各機能の連関メカニズムとして捉える必要性と有効性を明らかにした。 (2)糧のみならず、舵(リーダーシップ)や絆(地域連帯)にも寄与しうるような観光開発の戦略をシナリオとして作成した。 (3)初年度の成果を利用して個別主体の経営行動を分析した。 (4)観光開発が地域経済、財政に及ぼす影響について分析モデルを開発し、実証分析を行った。対象地域としては鳥取県・島根県の過疎町村を取り上げた。 これらの研究の遂行により、過疎地域の特殊性をふまえた観光開発の可能性とそれを科学的に分析し、有効な施策を検討するための方法論を提示しえたと考える。その成果を大別すると次の二つに分類される。 (i)観光開発を過疎地の地域振興の手段とみなし、社会システムとしての地域の活性化を関連づけて観光開発を検討するためのシステム・モデルが提示された。 (ii)主として地域経営の視点から観光開発の戦略を検討する場合の経営分析モデルを開発した。 これらの成果は、今後、他の過疎地域の活性化を観光を機軸として科学的に検討する上で有効な方法論として活用できるものと考える。
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