地価変動はさまざまな原因によって生じるが、今回、大都市で急騰した主要な原因は土地市場へのバブル資金の流入であると言われている。しかし、従来の研究では、バブル資金が土地市場において地価を変動させていく過程は理論的にはまったく考察されていない。そこで、本研究では、土地市場への外部からの資金流入が市場の内部で流動する構造について理論的に考察し、流入資金、流動資金、地主の所得、流出資金、譲渡税、取得税の関係を数理的に明らかにした。さらに他の地域の土地市場へ波及していく構造を理論的に導いた。理論モデルは線形連立体系として表現でき、きわめて操作性に優れたモデルとして表現できることが明らかとなった。 この理論モデルによって、次のような外部要因あるいは土地政策の効果をシミュレ-ションすることができる。(1)金融市場などからの投機的資金を土地市場への流入、あるいは逆に土地市場から金融市場などへの資金流出が土地市場に及ぼす影響分析。(2)土地取得税、土地譲渡税などの税率の変更が土地市場への流入資金、流出資金へ及ぼす効果分析。(3)公共事業による用地取得が土地市場の流動資金へ及ぼす影響分析。 また、地価の変動に対して、都市計画における用途地域制が十分な抑制効果を持っていないという批判がある。そこで、用途地域制と地価変動との関係について実証的な分析を行った.首都圏における過去10年間の公示地価デ-タを市区町村単位で分析し、用途地域制が地価変動に及ぼす効果についてマクロ分析を行った。さらに、東京都23区における各地点の公示地価のデ-タによって、用途地域制が地価変動に及ぼす効果についてミクロ分析を行った。この結果、用途別に地価抑制効果を明かにすることが出来た。
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