研究概要 |
環境保全に関する市民の意識変化形成の動的過程を,巨視的変数で表された集団の意識・態度に関する確率密度関数の時間発展方程式(マスター方程式またはFokker-Planck方程式)によって記述した。このモデルの数学的構造を,遷移確率関数を仮定して1次元及び2次元の場合についてシミュレーションにより検討した。さらに,セル・ダイナミカル・システム・モデルを用いて,2次元格子で表現された集団の構成員の意識状態の経時的な変化について検討した。個々人の意識状態を,それを決定する力の増加関数とし,その関数にS字型曲線を採用した。この意識・態度を決定する力は,(1)自己の意識が次の時点での意識形成に及ぼす効果(自己確信度),(2)構成員同士の相互作用,(3)集団外部からの影響の3つの和とした。これらの影響の大きさを変数パラメータにより表現し,種々のパラメータを設定してシミュレーションを行った。その結果,最初はランダムであった意識状態の分布が,時間の経過とともに集団を形成し,これが大きくなっていく様子が示された。 また,地域における環境保全運動,市民生活・環境開発に関するアンケート調査結果に基づいて,モデルの適用性を検討した。環境保全運動に関する結果については,余暇時間の有無という特性により清掃活動への参加状況の分布特性を表現した。環境開発に関するアンケート調査結果では,開発に対する期待と不安という意識を変数に2次元モデルとして解析した。 全体を通して,数理モデルの特性と有効性について整理するとともに,数理モデルとアンケート調査の連係方法等,分析手法における問題点を総括し,その改善方法について考察した。遷移確率の関数形等を検討するためには,アンケート回答結果を数量化する点等に問題があることを指摘した。
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