農耕地からの農薬流出に伴う健康影響のリスク評価とその制御に関する研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03832050
• 研究機関: 東京農工大学
• 研究代表者: 細見 正明 東京農工大学, 工学部, 助教授 (90132860)
• 研究分担者: 相沢 貴子 国立公衆衛生院, 水道工学部, 室長 (10192832)
• キーワード: 農薬 / 農耕地 / 湿地 / リスク / 浄水処理 / 塩素処理 / 凝集沈澱処理 / 休耕田

研究概要

環境水中で検出頻度が高い有機リン系農薬を主たる研究対象として、農耕地からの農薬流出をモデル化し、水環境中での運命予測を行い、浄水処理過程での挙動を明らかにし、飲料水の摂取に伴う農薬の健康影響リスクを評価するとともに、湿地(休耕田)の利用によるリスク削減効果を評価することを目的とした。
水質浄化法としての人工湿地に関するレビューを行い、水質浄化能、設計基準について検討した。人工湿地は、表面流れ方式と浸透流れ方式とに分かれる。湿地による水質浄化は、植物による栄養塩吸収による効果だけでないこと、人工湿地を用いた水質浄化システムは米国や欧州で検討され始めたが、その経験は浅く、これから数々の課題を克服していかねばならないことが示された。また、湿地による窒素及びリンの浄化機能が評価され、農薬への適用可能性が示唆された。
標準的な浄水処理における農薬の挙動について、室内でカオリンを濁質とした凝集実験の結果、MEP、オキサジアゾン、CNP、IBP、などの農薬は通常の凝集沈澱処理ではほとんど除去されないことが示された。また、実際の浄水場原水と処理後の浄水中の農薬濃度から、浄水処理によって除去されない農薬と、浄水には存在しなくなる農薬とがあることが判明した。基本的には、リスクの観点から通常の浄水処理では農薬は除去されないと考えるべきである。

研究成果

• [文献書誌] 森保文,細見正明,山口武則: "水田におけるリン浸透排出推定のためのモデル化" 農業土木学会論文集. 152. 39-46 (1991)
• [文献書誌] 細見正明,須藤隆一: "湿地による生活排水の浄化" 水質汚濁研究. 14. 674-681 (1991)
• [文献書誌] 丹保憲仁、金沢純、高橋克己、武田明治、真柄泰基、中村文雄、安藤正典、亀井翼、笹野英雄、伏脇裕一、近藤広之、相沢貴子、高木博夫、そのほか: "公共水域における開放系使用化学物質の動態及び安全性等に関する研究(1989-1991)" 環境庁企画調整局環境研究技術課 環境保全研究成果集 平成2年度報告. 9-1-9-19 (1991)
• [文献書誌] Aizawa,T.Magara,Y.Takagi,H.,and Nakamura,Y.: "Behaiviur of pesticides in drinking water production system." Water Malaysia '92,8th ASPAC-IWSA Reginal Water Supply Conference and Exihibition,Technical Papers. 3. 10D 2-1-10D 2-9 (1992)
• [文献書誌] 細見正明,須藤隆一: "手賀沼における窒素およびリンの収支" 水環境学会誌. 15. 105-112 (1992)
• [文献書誌] Hosomi,M.,and Sudo,R.: "Development of the phosphorus dynamic model in sediment-water system and assessment of eutrophication control programs" Water Science and Technology. 26. 1981-1990 (1992)
• [文献書誌] 細見正明: "ヨシ湿地による水質浄化" 水. 34. 61-68 (1992)
• [文献書誌] 細見正明: "土壌環境への影響" 水環境学会誌. 15. 787-792 (1992)
• [文献書誌] 細見正明: "有害廃棄物の環境影響評価システム" 環境と測定技術. 19. 12-31 (1992)
• [文献書誌] 細見正明: "首都圏の水-その将来を考える 高橋 裕編 水域の直接浄化とエコテクノロジー(分担執筆)" 東京大学出版会, 170-181 (1993)
• [文献書誌] 細見正明: "環境微生物工学実験法 土木学会衛生工学委員会編 ヨシによる水質浄化(分担執筆)" 技法堂出版, 353-356 (1993)