研究概要 |
植物における最も重要な生理活性物質の一つ植物ホルモン、オ-キシンは植物の形態形成、分化、細胞分裂等に決定的な役割を果たしていると考えられている。しかしながら、その分子レベルでの作用機構については未だにほとんど明らかにされていない。我々はGo期からS期への移行期にあるタバコ葉肉細胞プロトプラストから、オ-キシンにより発現が誘導されているparA,B遺伝子をクロ-ン化して遺伝子産物の機能と遺伝子発現の制御機構に関する研究を行なってきた。 parAのアミノ酸配列はRNAポリメラ-ゼと結合する大腸菌のSSpとの間にホモロジ-が見られるので、parA遺伝子産物は転写の制御に関与している可能性が考えられる。そこで生化学的、細胞生物学的な解析を行なうためparAのcDNAをT7プロモ-タ-の下流に結合し大腸菌内での大量発現系を確立した。これからparA蛋白質を精製し抗体を作製する。遺伝子発現の制御に関してはGUSをレポ-タ-遺伝子とするトランジェントアッセイの結果、オ-キシンによるparA遺伝子の遺伝子活性化は大部分が転写レベルで行なわれており、その制御には111塩基対のダイレクトリピ-トを含む5'上流領域が重要であることを明らかにした 新たにクロ-ン化に成功したparBについては完全長のcDNAの全塩基配列を決定して解析したところ、トウモロコシのグルタチオン Sートランスフェラ-ゼIII(GSTIII)と46%の相同性が見出だされた。 GSTは種々の薬物の抱合、解毒に関与する他、哺乳類ではアイソザイムのひとつP型がガン化に伴って特異的に転写レベルで誘導されることが知られている。parBの遺伝子産物が実際にGSTの活性を持つかどうか、持つならばタバコ葉肉細胞プロトプラストにおける役割は何か大変興味深い。
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