研究概要 |
植物における最も重要な生理活性物質の一つ植物ホルモン、オーキシンは形態形成、分化、細胞分裂等に決定的な役割を果たしていると考えられる。本研究の目的はオーキシンで発現が制御される遺伝子群をクローン化し、その機能並びに発現制御機構を解析することである。 現在までにタバコ葉肉細胞プロトプラストからオーキシンにより発現が誘導される遺伝子のcDNAを3種類クローン化した。これらをそれぞれparA,B,C遺伝子と命名し解析した結果、これらの遺伝子群の発現様式は基本的に同一であることが示された。構造解析の結果parAとparCはアミノ酸レベルで68%の相同性が存在することが解った。またparA,parCと相同性が存在するがオーキシンに反応しない遺伝子C-7のcDNAを単離した。これらの遺伝子の産物は大腸菌のRNAポリメラーゼのホロエンザイムと特異的に結合するタンパク質とも相同性が認められる。parA遺伝子産物の大腸菌内での大量生産系を確立しこれから抗原を得、ポリクローナル抗体を作製し解析したところ核に局在することが明らかになった。したがってparAとその関連遺伝子の産物は転写に関与している可能性が高い。 一方parBはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との相同性が見出だされたので、実際にGSTの活性を有することをparBのcDNAを大腸菌内で発現させ証明した。最近parBの産物は天然のオーキシンIAAと結合する可能性が示唆されている。 parAとparBのゲノムをクローン化しオーキシンによる遺伝子活性化を司る領域を形質転換タバコ、トランジェントの実験系で解析した。
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