本年度は、1)酵母減数分裂期におけるエストロゲンの作用の解明、2)酵母アデニル酸シクラ-ゼ遺伝子のエストロゲンによる活性化、3)酵母エストロゲンリセプタ-遺伝子の単離の3点を目標として研究を行った。3)の目標に関しては、ヒトエストロゲンリセプタ-遺伝子をプロ-ブとして酵母ライブラリ-をスクリ-ニングしたが、他の多くの例と同様酵母から対応する遺伝子を単離することはできなかった。今後他の方法を用いて目的を達成したいと考えている。したがって以下1)と2)の結果について報告する。 1)二倍体酵母を減数分裂を行う条件下で、エストロゲン添加及び非添加状態におき、それぞれの細胞が正常または減数分裂状態にあるかについて経時的に四倍体酵母の割合などいくつかの指標にしたがって沢定したところ、酵母減数分裂期にエストロゲンを作用させると減数分裂への移行が遅れることが判明した。この変化はcAMP濃度の上昇を伴っており、エストロゲンが正常分裂のみならず酵母の減数分裂においてもcAMPを介して細胞分裂を調節する可能性が示された。この結果は高等動物における減数分裂がエストロゲンなどステロイドホルモンによりcAMPを介して調節される可能性が示されていることと対応しており、今後の減数分裂研究の高等動物のモデルとして酵母が十分に利用し得ることを示しており大変興味深い。 2)酵母アデニル酸シクラ-ゼプロモ-タ-にCAT遺伝子を連結したものを酵母細胞に導入したところ、エストロゲン存在下では導入したものは導入しないものに比べやや高いCAT活性を示した。この結果はエストロゲンによりアデニル酸シクラ-ゼ活性が上昇することを直接示したものとなった。今後高等動物への導入を行って詳しく調べる予定である。
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