酵母アデニル酸シクラーゼがエストロゲンによって調節されるメカニズムを調べるために、この遺伝子のプロモーター部にCAT遺伝子を連結して作った合成遺伝子を、酵母及びエストロゲンリセプターを発現している動物細胞(MCF-7)に導入して、エストロゲン処理を行った。酵母アデニル酸シクラーゼ遺伝子プロモーター部にはエストロゲンリセプターが結合する可能性のある配列が存在するが、この部分を含むプロモーター部をエストロゲンリセプターを発現している動物細胞に導入した場合は、CAT活性がやや上昇した。この結果は、酵母アデニル酸シクラーゼ遺伝子プロモーター部が、エストロゲンおよびエストロゲンリセプターによって発現調節を受けることを示している。現在ゲルシフト解析を中心とした検討によって、プロモーター部とエストロゲンリセプターの結合能を詳しく追跡しているが、結合能が低く、明確な結果を得るに至っていない。ともあれ酵母アデニル酸シクラーゼがMCF-7内でエストロゲンによって活性化を受ける可能性があることは示された。ところがエストロゲンリセプター結合モチーフをもつDNAと酵母の核抽出物とを反応させた後、ゲルシフト解析してもシフトバンドを確認することは出来なかった。 我々は、酵母でエストロゲンがアデニル酸シクラーゼを介して細胞分裂に作用しうることを既に報告している。本研究は、酵母でのエストロゲンリセプターの存在を調べるものとしてスタートした。しかしながら上記の結果は酵母には動物におけるのと同じようなエストロゲンリセプターが存在しない可能性を示唆するものであった。しかしながら異なるタイプのエストロゲンリセプターの存在も考えられるところであり今後の研究が待たれる。
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