研究概要 |
休止期(G_0期)にはいっている細胞(ラット肝細胞)の核マトリックスの分析を行い、その化学組成がS期のものと殆ど変わらないにもかかわらず、そこに結合して存在するDNAポリメラーゼ活性がきわめて低いことを確かめ、細胞が増殖刺激を受けて後、核マトリックスの上で、DNA複製複合体が形成される可能性を示唆した(Nat.Sci.Rep.Ochanomizu Univ.(1994)45,印刷中)。また、これまでに、微小管結合タンパク質、MAPsが核マトリックスのDNA合成と単離・精製されたDNAポリメラーゼを活性化することを示したが、今年度はMAPsの核マトリックスに対する効果を詳細に調べた。その結果、MAPsは、活発にDNA合成を行っている複製複合体の活性にはなんら影響を与えず、潜在的に存在する(核マトリックス上で複合体を作っているが、そのままでは活性を示さない)複製複合体の、デオキシリボヌクレオシド三リン酸に対する親和性を著しく高めることによって、その活性を顕著に増加させることが明らかになった(Biochem.Mol.Biol.Int.(1993)31,905-910に発表)。また、MAPsあるいはMAPs様タンパク質がDNA合成期の核マトリックスに結合して存在するか否かを調べ、それらのタンパク質がDNA複製複合体を構築する一員である可能性を検討した。そして、Physarumの細胞周期に伴って、核マトリックスを構成するタンパク質が変化し、かつ、S期の核マトリックスにMAPs様タンパク質が存在することが示唆された。また、MAPsのリン酸化によって、核マトリックスの構造変化がもたらされることが示唆された(以上、論文準備中)。これらの研究結果から、MAPsあるいはMAPs類似タンパク質が、核におけるDNA複製を調節している細胞質性のメディエーターである可能性が示された。
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