研究課題/領域番号 |
03833023
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
渡辺 一雄 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00158619)
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研究分担者 |
河原 明 広島大学, 総合科学部, 助手 (50112157)
天野 實 広島大学, 総合科学部, 教授 (00076986)
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キーワード | 無蛋白培養 / 増殖因子 / 繊維芽細胞 / ニワトリ胚 / 胚細胞 / 間充織 |
研究概要 |
最近1年間、原因不明の『コンフルエント後の細胞死』にみまわれ、培養上清の収集が意にまかせなくなった。胚組織細胞を無タンパク下に初代培養すること自体、元来チャレンジングな試みであり、改めてこの予期せぬ事態を克服するための努力を重ねた。その結果、次のような事実が判明した。 1.アスコルビン酸リン酸を無タンパク培養液に添加することにより、この細胞死は起こらなくなり、コンフルエント後も培養上清の採取が再び可能となった。 2.このとき、細胞の形態は独特の偏平化を示しており、また、培養上清に含まれる細胞増殖促進活性画分の組成も、アスコルビン酸不添加の場合と明らかに異なっていた。 3.我々がすでに報告したSAF‐11a、SAF‐11bとは異なる4種の熱感受性の増殖促進活性画分が得られており、この中には分化軟骨細胞に対してのみ増殖促進活性を示すものが含まれ、実際に軟骨分化途上の胚組織内で働くオートクライン因子の可能性がある。 4.これらの増殖促進活性画分のどれも、単独ではアスコルビン不添加下での細胞死を救うことはできなかっただけでなく、これらのうちの一つはむしろ細胞死を促進する働きがあった。 以上の結果は、ニワトリ胚の間充織細胞が無タンパク培養液の初代培養下で増殖し、維持され、分化調節をうけるためには、予期以上の多種類の増殖調節、分化調節因子の関与によって支えられていることを物語っている。このこと自体、重要な発見であるが、同時に、これらは当然、環境の変化に対応してデリケートな変動(シフト)を行っているはずで、今後の解析には相当の工夫が必要であることを示している。
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