研究課題/領域番号 |
03833023
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
渡辺 一雄 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00158619)
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研究分担者 |
河原 明 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50112157)
天野 實 広島工業大学, 環境学部, 教授 (00076986)
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キーワード | 無蛋白培養 / 増殖因子 / 繊維芽細胞 / ニワトリ胚 / 胚細胞 / 間充織 |
研究概要 |
ニワトリ胚強膜線維芽細胞が無蛋白培養下でコンフルエントに到達した後に産生する、熱感受性でヘパリン結合性のオートクライン増殖因子SAF-IIaは、HPLC size exclusion chromatography(TSK-G3000SW)によると、分子量約16KDaであった。また、この因子はBALB/c3T3細胞をよく増殖させ、FGF familyに属する増殖因子と考えられた。 一方、SAF-IIbは、最適濃度の10倍に濃度を上げると、そのオートクライン増殖促進活性が消え、またヘパリンには弱く結合するのみで、BALB/c3T3細胞に対しても活性を示さず、なお本体不明である。 レチノイン酸は、細胞数、3×10^4細胞/15-mm dishのまきこみ細胞密度を臨界密度とし、これよりも細胞密度が小さい時には細胞増殖を抑制し、これよりも細胞密度が大きい時には細胞増殖を促進することが判った。この二相性の効果は、恐らくオートクライン増殖因子の産生を介して働いていると考えられた。 強膜線維芽細胞は、bFGFを添加して軟寒天培養すると、軟骨の分化形質を発現することなく増殖し、巨大な線維芽細胞コロニーを形成するが、TGF-βはこの増殖促進を濃度依存的に阻害することが判った。一方、この細胞から分化した分化軟骨細胞では、TGF-βは、このbFGF依存性の増殖促進を逆に濃度依存的に促進した。さらに、強膜線維芽細胞はTGF-β様の分子をオートクライン分泌していることがELISA法によって示された。すなわち、この細胞の分泌するオートクライン因子群はその増殖促進活性を正または負に、相互に干渉しあうことが判明した。 以上の結果から、前軟骨細胞である強膜線維芽細胞が無蛋白条件下に産生するオートクライン因子群にはユニークなものが含まれることが推定され、その抽出精製と共に、その作用様式を解明することは、軟骨の形態形成を支配している液性因子を解明する上で重要な知見をもたらすと期待された。
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