サイクリンは、細胞周期の各期で細胞内の存在量が大きく変動するタンパク質の1つである。このうちB1型とB2型は、カエル卵中のMPFの構成要素をなし、A型は、S期に作用点を有すると考えられている。我々は、体細胞におけるMPFの活性化機構を解析する目的で、ハムスタ-細胞BHK21株より、A、B1、B2、のそれぞれのサイクリンのcDNAを分離し塩基配列を決定した。得られたcDNAの長さは、塩基対でA=2719、B1=1530、B2=1390でありそれぞれA=421、B1=429、B2=397アミノ酸をコ-ドしていた。 得られたcDNAをプロ-ブにmRNAの解析をした。A(約3kb)は、S期の初期から存在し、G2期までその量が上昇する事、またB1は2本のバンドを検出し(約1.8kbと約2.7kb)、いずれもS期の後半からM期にかけて量が増加すること、B2(約1.4kb)もB1と同様の結果を示すこと等がわかり、A型とB1、B2型は細胞周期で発現パタ-ンが異なることが明らかになった。 これらのcDNAを用いて、大腸菌でタンパク質を発現させ、それぞれに特異的な抗体を得た。ウェスタンブロッティングでは、Aは約50kD、B1は約60kD、B2は約45kDのタンパク質として認識された。その発現量は、mRNAの発現量と相関し、A型はS期の最初から検出され、G2期まで量的増加がみられる。またB1、B2両型とも、S期後期からタンパク質の合成量が増加し、M期に最大となり、M期終了とともに減少した。また、それぞれの抗体を用いた免疫沈降物の有するヒストンH1キナ-ゼ活性も全く同じ変動を示した。 B1型のサイクリンはcdc2タンパク質と、A型はcdk2タンパク質とそれぞれ複合体を形成することでそのキナ-ゼ活性を制御している。B2型のそれは不明であるので、今後、この点を解明して行きたい。
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