研究概要 |
Na,KーATPaseは細胞内イオン環境維持のためのNa^+およびK^+ポンプとして,必要不可欠の酵素である。本酵素はcatalytic subunitであるαーsubunitと,未だ機能がはっきりしないβーsubunitから構成されている。我々はβーsubunitの役割を研究する目的で,HeLa細胞に改変βーsubunit(N末側半分)を遺伝子工学的手法を用いて発現させ,本酵素のアセンブリの解析を行なってきた。平成3年度においては,引き続き上記改変βーsubunit(βN)を発現しているHeLa細胞を用いて本酵素のアセンブリ過程の解析を行ない,以下の結果を得た。即ち,βNを発現しているHeLa細胞にA23187を作用させると,ER内でββN complexが形成されることが明らかになった。この結果はER内でのββN complex形成にカルシウムイオンが関与していること,また,βーsubunitは正常細胞ではER内でββ complexとして存在している可能性があることを示唆している。上述の研究に加え,PC12細胞を用い,NGF添加による際のNa,KーATPaseのinduction機構の解析を行なった。即ち,PC12細胞にNGFを作用させ,αーおよびβーsubunitの経時的変化を解析した。その結果,Na,KーATPase活性の経時的上昇と並行して,細胞内のαーおよびβーsubunit量は共に増加したが,その増加の程度はβ>αであることが分かった。このことはNa,KーATPase活性上昇にβーsubunit量の増加が重要であることを示している。
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