研究概要 |
骨格筋の分化は、中胚葉由来の一群の細胞が筋芽細胞としての決定を受け、増殖し、さられ多核の筋管細胞を形成していくプロセスであり、胚発生における器官形成、細胞分化のメカニズムを探る有用な系のひとつである. Myogeninは,MyoDファミリーに属し、筋細胞特異的遣伝子群の発現を誘導する転写因子であるが、この遣伝子は,マウス胚の体節及び肢芽でその強い転写活性化がみられ、またこれまで報告されているかぎり全ての樹立筋芽細胞で構成的あるいは誘導的な発現がみられる。我々はmyogenin遣伝子の胚発生における発現誘導機構に興味を持ち、(1)myogenin遣伝子を単離し、(2)その遣伝子上流にCAT遣伝子を結合したリポーター遣伝子を作成し、種々の細胞に導入することにより、これが筋細胞特異的な発現を示すこと、(3)さらに、MyoD,MRF4等、他の筋分化誘導因子によってその転写が活性化されることを見い出した。(4)次に、このリポーター遺伝子をlacZ遺伝子に置き換えたキメラ遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作成し、胚発生におけるその発現を調べたところ、8。5日胚の体節で強い発現が見られ、9。5日胚のbranchyial arches(咽頭筋や顔筋の筋芽細胞が生ずる部位)、さらに11日胚で肢芽における誘導がみられた。そして、13日胚では筋肉組織のほぼ全体でその活性がみられた。これらは、報告されているmyogenin遺伝子の発現パターンとほぼ一致してしているものであった。 以上のことから、myogenin遣伝子の上流領域には、筋細胞特異的な発現に秘要な領域と体節および肢芽における発現誘導にかかわる領域が含まれていることが示された。そしてさらに、プロモーター領域の解析から筋細胞特異的な発現に必要な領域は主に一300bpまでの近傍にあるにの対し、体節における活性化には、更に上流領域が必要であることを明かにした。
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