血管内皮に於ける細胞と細胞及び細胞と基質の間の接着は、血管の正常な機能を維持する上で極めて重要である。本研究ではニワトリ胚およびヒヨコの血管の全載標本(内径が0.1mm以上の血管)を材料に、内皮細胞と細胞基質(なすわち基底膜)の間に働く接着メカニズムの解明、特にストレスファイバー(SF)を介した接着機構の解明に向け、細胞生物学的研究を進めてきた。以下に本研究で明らかになった新しい知見について報告する。まず血管内膜を形成している内皮細胞のSFの超微構造や末端部の形態が、培養細胞SFと同一で、血管内膜でもビンキュリンやフィブロネクチン(FN)の局在を伴う接着斑の形成があり、細胞と基低膜間の接着に関与することが分かった。さらに培養細胞にみられるSFとFNの位置関係が血管壁にもあるかどうかについて、SFとFNのパターン変化を血管の発達にそって調べた。同じ個体では、大きい血管ほどSFの発達がよく、小さいものではSFがほとんどみられなかった。FNの走行は大きな血管では血流方向へ並んでいるが、小さくなるに従って並び方が乱れていき、内径が0.1mm前後の血管ではランダムになっていた。大きな血管でも分岐部の下流側ではSFの発達が悪く、FNの走行も乱れていた。これらの結果は血管基低膜のFN構造が内皮細胞SFの影響を受けることを示唆する。また同じ血管の発生に伴う変化をみると、血流方向への細胞の伸長、続いてSFの配向、そしてFNの配向、という順序がみられ、ここでもSFとFNの並び方の深い関係がみられた。このような生体内での観察に加え流れ負荷装置を使い、流れ存在下の内皮細胞のSFとFNの構造の関係をin vitroで解析し始めている。FN構造ができるには長い時間がかかることから、単層形成内皮細胞の長期間培養システムをマロチレートを使用して開発した。これからこのシステムを用いin vitroでSFとFN構造の関係を解析する計画である。
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