研究概要 |
排気ガス中のNOxの放電プラズマによる処理を目的として,レーザー誘起蛍光法(LIF)を用いて大気圧非熱平衡放電プラズマ中のラジカル・分子計測を行った。直流正極性ストリーマ放電を用いる大気圧非熱平衡放電プラズマ反応器中において,定常状態で放電プラズマが発生している条件でのNO分子,OHラジカルなどの二次元分布の計測を主な目的とした。直流正極性ストリーマ放電を用いる大気圧非熱平衡放電プラズマ反応器としては,ノズルつきパイプ電極を用いるコロナラジカルシャワーシステムを主として,針対平板電極,ノズル対平板電極などの電極配置の放電プラズマ反応器を用いた。研究内容としては,(1)定常直流ストリーマ放電状態における誘起蛍光のタイミングとレーザー誘導ストリーマの関係,(2)レーザー誘導ストリーマの特性,(3)NO分子の2次元分布計測特性,(4)放電により生じる電気流体力学的流れ場の影響について調べた。定常直流ストリーマ放電の状態をICCDカメラおよび高速オシロスコープを用いて観測し,その電流密度分布,周波数,電圧電流特性,発光状態について明らかにした。また,レーザー誘起蛍光法においてレーザーを照射したとき生じるレーザー照射時間と誘導ストリーマ発生時間,誘起蛍光発生時間との関係を明らかにした。このことから,コロナ発生条件下で,レーザー照射により誘導ストリーマが発生しても,LIF法によりNO分子計測が可能であることを示し,その手順を確立した。レーザー誘導ストリーマをICCDカメラを用いて,5nsのゲート時間幅で観測し,レーザー誘導ストリーマの特性を明らかにした。放電極を中心として5cmx40cmの広い領域をLIF法で観測できるように装置を工夫し,また,測定に用いるレーザーの波長を選定することにより,広領域の観測を可能にした。放電プラズマ反応器中におけるNO分子分布をLIF法を用いて測定し,NO分子は,ストリーマ放電が生じている領域だけでなく放電プラズマ反応器の上流から下流に渡る極めて広い領域で処理されていることを明らかにした。この事実は,放電による電気流体力学的流れ場の影響がNO分布に影響していると考えて,放電プラズマ反応器中の流れ場について調べた。その結果,電気流体力学的二次流れ場により装置内には渦が発生して,ガスの滞留時間に比べて短い時間で流体の攪拌が生じて,これがNO分子分布に大きく影響していることを明らかにした。
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