近年の微細加工技術の発展により、シングルドメインのナノ粒子を整列させた、パターン化媒体を制御することが可能となってきた。これは、磁気記録素子としての応用が期待でき、注目を集めている。本年度は、磁性ナノ粒子系の磁化反転の問題と共に、非平衡reweighting法の開発を行った。 第一に、ナノ粒子系の磁化反転を研究対象とした。自由エネルギー障壁の評価をするために、状態密度を精度よく評価するモンテカルロ法であるWang-Landauアルゴリズムを用いた。磁化とエネルギーの結合状態密度を求め、磁化に関するマスター方程式を導き、Mathematicaの数式処理の利用により厳密にそのマスター方程式を解くことを試みた。磁化反転時間の温度依存性はN-fold way法により求められているものと良い一致を示した。 第二、非平衡過程に対するreweighting法を開発した。平衡系のシミュレーション手法として、ある温度のシミュレーションを行い、ボルツマン重みの付け替えで他の温度の物理量を計算するreweighting法が確立しているが、本研究では、時間依存する非平衡系に拡張した。統計学で用いられるSequential Importance Sampling法に基づいて定式化し、イジングモデルの非平衡緩和の解析に応用した。有限サイズスケーリングの解析と合わせて、1つの温度における非平衡緩和の測定で、転移温度を決定すると共に、動的臨界指数zを効率よく決定することに成功した。磁化反転の問題への応用を実行中である。
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