近年の微細加工技術の発展により、シグナルドメインのナノ粒子を整列させた、パターン化媒体を制御することが可能となってきた。これは、磁気記録素子としての応用が期待でき、注目を集めている。本年度は、磁性ナノ粒子系の磁化反転の問題と共に、非平衡reweighting法を開発、磁性体の交換バイアスの問題の研究を行った。 第一に、昨年度に引き続き、ナノ粒子系の磁化反転の問題を扱った。磁化に関するマスター方程式を導き、Mathematicaの数式処理の利用により厳密にそのマスター方程式を解く方法を昨年度提案したが、このようなマスター方程式の取り扱いと、実際のダイナミックスに基づく実時間との対応関係を論じた。 第二、昨年度開発した非平衡過程に対するreweighting法を具体的な問題へ応用した。統計学で用いられるSequential Importance Sampling法に基づいた非平衡reweighting法を、本質的に非定常相転移を示す系の相転移の問題に適用した。具体的には、driven diffusive格子ガスモデルの相転移の研究に適用し、有限サイズスケーリングの解析と合わせて、動的臨界指数zを論じた。 第三に、磁性体のヒステリシスループに非対称性の現れる交換バイアス問題に取り組んだ。反強磁性体と結合した強磁性体に見られるが、その詳細な機構は明らかでない。反強磁性体のドメイン構造が重要な役割を果たすと考え、ドメイン構造を仮定したモデルを立て、多成分の平均場方程式を解くことにより、交換バイアスのドメインサイズ依存性、冷却磁場依存性、反強磁性層の厚さ依存性などを明らかにすることに成功した。
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