本研究の目的は、従来の群速度が破綻する領域において意味を持つ新しい群速度の定義の有効性を光学領域での実験的によって検証することである。これまでに開発したマイケルソン干渉計とチタンサファイアレーザーを用いた高精度パルス透過時間測定装置を使用し、平成17年度は、研究計画に従って以下の研究を行った。 1. 16年度までに、新しい群速度の定義の有効性を強い分散媒質(ZnSe)で確認したが、17年度は、光導波の群速度分散に対しても、同様の原理が成立することを実証した。 2.具体的には、回折格子対からなる4f型のパルス整形ユニットによって、チタンサファイアレーザーからのフェムト秒光パルスを任意の波形に変換し不規則なパルス(インコヒーレントパルス)を作りだし、フォトニック結晶ファイバー中を、この不規則なパルスを伝播させた。 3.フォトニック結晶の強い群速度分散によって、不規則なパルスはその形を著しく変化させ、従来の群速度乗艇儀はその意味を失う。しかし、その「重心」は一定の規則によって伝播し、コヒーレントパルスの重心と2フェムト(10^<-15>)秒の精度で一意することを実験的に示した。 4.これらの実験結果は、フォトニック結晶ファイバーなど光導波の分散に対しても、従来の群速度の定義が破綻する領域でも、パルスの「重心」に基づいて記述した新しい群速度は意味を失わないことを示している。
|