1.PDF発現の日周性の検討:1)明暗12:12および恒暗条件下で視葉および脳から抽出したペプチドを抽出し、抗PDF抗体を用いた競合的ELISA法によりPDFペプチド量の定量を試みた。その結果、視葉および脳葉の両方でPDF量は日周的に変動し、主観的夜の終わりに最大となり、主観的昼の中ごろに最少となることが明らかになった。2)細胞レベルでの発現リズムを検討するため、抗PDF抗体を用いた免疫組織化学による染色を行った。PDF免疫陽性細胞は、視葉に細胞体をもつ3グループが確認された。一つは視髄基部に細胞体をもつ約15個の集団(PDFMe)であり、他の2つはそれぞれ視葉板と視髄境界付近の腹側(PDFLav)と背側(PDFLad)にある数十個の細胞である。PDFMeには、強い免疫染色性を示す大型細胞(lPDFMe)と比較的弱い染色性しか示さない小型の細胞(sPDFMe)があることを確認した。この抗体の免疫染色では、核内は標識されなかった。共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察では、いずれの細胞も夜間にPDF免疫染色性が高く、昼低い傾向があり、これはほぼELISAの結果と一致していた。 2.pdf mRNA発現の日周変動の検討:転写レベルでの発現制御を見るために、pdf cDNAからdigoxygeninでラベルしたRNAプローブを作製し、in situ hybridization法を確立した。PDFMeでは大型細胞で小型細胞よりも多くのpdf mRNAが合成されていることが明らかとなった。PDFLa細胞でも標識は弱く、pdf転写量は少ないことがわかった。定量的PCRからも、PDFMe細胞での転写量がでPDFLa細胞の役10倍であることが示された。一方予備的なreal time-PCRの結果から、pdf mRNAは明期の終わりよりも明期の開始時に有意に多いことが示された。今後詳細な検討を行う計画である。
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