久保田は、成島家関係の資料調査と収集、近藤芳樹の日記と周辺資料の収集に研究の主眼を置いた。成島信遍の伝記研究が成島家の漢学・和学の継承の実態を探る上で前提となるため、一時中断していた年譜稿の執筆を再開し、元文元年の1年の記事を網羅することを心がけた。なお、同年中の記述はまだ完結していない。また、近藤芳樹の日記は全冊を写真撮影して解読と校訂に着手し、第1冊より順次公刊を開始した。 孫は、前年度に引き続き中島敦と中国思想との関係をより深く究明するために、中島敦の研究文献を網羅的に収集すると共に、主に中島敦家の蔵書(日本大学図書館所蔵)と中島敦の原稿や同家の遺物(神奈川県立近代文学館所蔵)などの全貌をより細かく調査し、その全体の傾向を把握した上、特に中島敦家と中国思想(特に儒学・道学関係を中心に)との関係を示す資料、また中島敦の書入れと思われる部分について調査、収集した。更なる綿密な調査や考証をする必要があると思われるが、本年度の調査により、中島敦及び中島敦家と中国思想との関係はより一層明瞭になったと考えている。 本研究は今年度を以て終了することとなったが、今後の研究の基礎を築くという点では十分な成果があったと考える。特に成島家、近藤芳樹、中島家という3つの観点から幕末・明治の和学・漢学の展開を考究するための基本資料は収集できたので、今後もそれぞれに研究を進めていきたい。
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