本研究では、量子井戸における量子準位間遷移(ISBT)を利用した超高速光変調器の開発を目的とし、GaN/AlGaN/AlNステップ量子井戸のStark効果による電界吸収変調を検証することを目指している。 本年度の研究では、20周期のステップ量子井戸を有する変調器構造を分子線エピタキシー(MBE)法で作製し、共同研究を行っているスウェーデンのKTHにおいてマルチパス導波路型変調器構造のデバイス加工を行った。量子井戸をAlGaNでクラッドした単純なデバイス構造では、リーク電流が大きく、デバイス動作の検証が困難であることが見出された。そこでAlN多重中間層の導入による貫通転位の低減を試みたところ、リーク電流の抑制効果が観測された。さらなる貫通転位の低減を目的とし、KTHにおいて有機金属気相堆積法(MOCVD)法で成長した高品質GaNテンプレート上にMBE法でAlN多重中間層と量子井戸構造を成長するための結晶成長実験を実施中である。 井戸層と障壁層界面における相互拡散を考慮した電界変調デバイスの理論解析を行ったところ、相互拡散によってStark効果が著しく減少することがわかった。これに対して、相互拡散を考慮した新しい設計指針を開発し、相互拡散の存在する系においても大きなStark効果を実現するデバイス構造を理論的に示すことに成功した。また、InP基板上の高In組成InGaAs/AlAs系量子井戸構造に対する理論解析も行った。 上智大学で作製したGaN/AlN系全光変調器デバイス、GaN/AlN系1.55〓m帯ISBT受光デバイス、高In組成InN/InGaN量子井戸における光学遷移波長や熱効果に対する実験値と理論解析の比較検討を行った。また、スウェーデンとの共同研究として、Chalmers大学とはMBE成長した窒化物量子井戸の理論解析と評価、KTHとは表面プラズモン導波路用材料の評価研究を行った。
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