研究概要 |
本研究の目的は衛星搭載光学センサから積雪物理量を推定するために用いられている積雪放射伝達モデルの高精度化にある.積雪アルベド,反射率は近年高精度のモデル化が行われるようになり,積雪物理量との対応関係も分かってきた。しかし,これらのモデルは積雪粒子を球と仮定しており,実際の雪の結晶形態が十分反映されていないため,衛星データから得られる積雪物理量に誤差が含まれている可能性がある。そこで本研究では積雪粒子の光学特性を明らかにするために,防災科学技術研究所長岡雪氷防災研究所新庄支所,雪氷防災実験棟において,氷球状と樹枝状の人工積雪の分光測定を行い,積雪放射伝達モデルと比較した。 測定に用いた個々の氷球状の粒子の直径は20-60μm以下であった。この積雪に対して分光測定を行い,波長別アルベドを測定した。氷球状の積雪粒子に対して,粒子を球形に仮定した積雪放射伝達モデルと比較したところ,氷球状の積雪粒子の大きさはモデル計算から直径約40μm以下と推定され,この値は測定結果とほぼ一致した。 一方,樹枝状の積雪粒子も同様に波長別アルベドを測定し,積雪放射伝達モデルと比較を行った。測定に用いた樹枝状結晶の直径は約500μm,枝の太さは約20-60μmである。樹枝状粒子の波長別アルベドは,積雪粒子の大きさが異なるにもかかわらず,氷球状の積雪粒子の波長別アルベドとほぼ同じ結果が得られた。この現象を再現するため,積雪粒子に円柱を仮定して非球形効果を取り入れた積雪放射伝達モデルを用いて計算したところ,樹枝状粒子の波長別アルベドは樹枝状結晶の枝の太さ関係していることが明らかになった.また,非球形粒子の体積と表面積の比が球のそれと等しいとき,樹枝状結晶の光学特性は球の光学特性にほぼ等しくなることが明らかになった.
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