本年度は昨年明らかにしたGGA-GATドメインとユビキチンとの結合様式をより詳細に調べるために、高エネルギー加速器研究機構の若槻壮市先生、名古屋市立大学の加藤晃一先生らの研究室とともにC-GATドメインとユビキチンとの三次元構造を決定した。まず若槻研究室におけるX線結晶構造解析により、C-GATドメインのN末端側とユビキチンとの複合体の構造を決定した。しかし、C-GATのN末端側とユビキチンが結合するという構造は以前私が変異体解析により同定したC-GATのC末端側がユビキチンとの結合サイトになるという結果とは異なっていた。結晶ではC-GATのC末端側に関してはC-GAT同士のダイマー形成に関与しており、ユビキチンとは結合していないが、C-GATのダイマー形成は溶液中では起こっておらず、おそらく結晶化時のアーティファクトと思われる。そこでC-GATのN末端側およびC末端側にそれぞれ変異を入れた変異体、および両方に変異を入れた変異体を作成し、pull down解析およびBIACOREを用いた定量的な結合実験を行ったところ、いずれも一カ所の変異でも結合能あるいは最大結合量が落ちるが、両方に変異を入れた変異体でさらに結合能が下がることがわかった。この結果からC-GATドメインは二カ所でユビキチンと結合していることが示唆された。GATのC末端側とユビキチンとの複合体の構造が依然はっきりしなかったため、加藤晃一先生との共同研究によりNMRによる解析を行った。NMRでも溶液中でC-GATは二ヶ所でユビキチンと結合することが確認でき、またC-GATのN末端側に変異を入れた変異体とユビキチンとの結合様式を調べることにより、C-GATのC末端側とユビキチンとの結合様式を調べることができた。この結果以前私が同定したユビキチンとの結合に重要なC-GATのC末端側の残基が重要な働きをすることが、NMR解析においてもあきらかとなった。
|