研究概要 |
研究代表者が着目している「高強度と低強度の運動を組み合わせたレジスタンストレーニング法」は,高強度のみを用いた従来の方法に比較して,運動直後に成長ホルモンの著しい分泌増大がみられる点に特徴がある.一方,運動後における成長ホルモンの分泌増大は,トレーニングによる筋肥大や筋力増大に貢献するものと考えられるが,この点に関しては十分に明らかにされていない.そこで今年度は,成長ホルモンの分泌量が大きく異なる2種のレジスタンス運動に対するトレーニング効果の相違を,2つの実験を通して比較した. まず実験1では,男子大学生9名を対象に,仕事量が同一の2種のレジスタンス運動(N-type, NR-type)に対する各種ホルモンの分泌動態を比較検討した.N-typeにおいては,75%1RM(repetition maximum)×10回による3種目の運動を3〜5セットずつ(セット間休息1分)行わせた.一方,NR-typeにおいては,N-typeと同様の負荷強度・反復回数による運動を,各セットの途中(5回目と6回目の動作反復間)に30秒間の休息をはさんで行わせた.次いで実験2では,男子大学生26名をN-typeの運動を用いるN群,NR-typeの運動を用いるNR群およびコントロール群に分類し、週2回12週間にわたるトレーニング効果を比較検討した. その結果,1回の運動後における血清成長ホルモン濃度は,N-typeの運動がNR-typeの運動に比較して有意に高値を示した.一方,血清テストステロン濃度はいずれの試技においても顕著な変化は.認められなかった(実験1).また,N-typeの運動はNR-typeの運動に比較して,トレーニングによる筋断面積および最大筋力の増加率が有意に高値を示した(コントロール群には変化は認められず).さらに,N-typeの運動後における成長ホルモン濃度の最高値とトレーニングによる筋断面積の増加率との間には,有意な正の相関関係が認められた(実験1・2). 以上の結果から,レジスタンス運動後における成長ホルモンの分泌増大は筋肥大の程度と関連している可能性が認められた.
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