研究課題
昨年度より引き続き、瀬戸内海の干潟での採集調査を続けて、アナジャコ下目と共生するエビヤドリムシ類の宿主特異性のパターンを記述した。特に、昨年度採集された未記載種のエビヤドリムシ類について、さらに形態を精査したところ、アメリカにのみ分布するOrthione属であることが分かった。アメリカ産の標本を取り寄せて検討を行った結果、本種は2004年にオレゴン州から記載されたOrthione griffenisであることが明らかになった。日本での宿主は、主にバルスアナジャコとナルトアナジャコであり、同所的に分布するヨコヤアナジャコへは共生を行わず、ある程度高い宿主特異性を有している。本種はオレゴン州で近年になって増加して社会問題となっており、移入種であることも含めてオレゴン州立大学Hatfield Marine Science Centerの研究グループと共同してその生態調査を開始した。予備的な宿主置換実験にも成功しており、今後、本種を用いて宿主特異性を検証する実験を行う予定である。また、宿主となるアナジャコ類の生態特性を、行動観察と口器付属肢に生える剛毛のタイプを分類することにより検討した。その結果、ハサミシャコエビは堆積物食に加え肉食も行うことが明らかになったが、これは、本種の共生者相が乏しいことの一因と考えることができる。エビヤドリムシ類の宿主特異性パターンとの比較を行うために、アナジャコ類と共生するカニ類の宿主特異性について調査を行った。その結果、アナジャコ類の巣穴に共生するカニ類は、ユムシ動物門のユムシの巣穴へも共生を行い、宿主特異性は低いが、アナジャコの身体を利用するカニ類はユムシとの共生を行わず、宿主特異性が高いことが明らかになった。
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Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom (in press)
Contributions from the Biological Laboratory, Kyoto University 29
ページ: 383-399