杢年度は、Li_2S-P_2S_5系ガラスに対して、多成分化および有機ポリマーとのハイブリッド化による新規な高リチウムイオン伝導性固体電解質の作製を試みた。 Li_2S-P_2S_5系ガラスを加熱結晶化することにより、高リチウムイオン伝導性Li_4GeS_4-Li_3PS_4系thio-LISICON結晶と類似の結晶が析出する。そこで、第3成分としてSiS2やGeS2を添加したガラスからの結晶化挙動について検討した。550℃で加熱結晶化させたガラスセラミックスに対して、SiS_2添加系ではthio-LISICON類似結晶の析出が確認され、室温で1.2x10^<-3>S/cmの高い導電率を示した。これに対し、GeS_2添加系ではthio-LISICON結晶以外にもLi_7PS_6結晶の析出が確認され、室温での導電率は6.4x10_(-4)S/cmであった。ラマン分光測定より、加熱結晶化前後で基本骨格であるPS_4^<3->ユニットに大きな変化はなかったが、固体高分解能NMR測定より、加熱結晶化前後でP周りの局所構造が変化し、SiS_2添加系とGeS_2添加系においても大きな違いが確認できた。析出結晶の生成プロセスの解明には、局所構造に注目する必要があると考えられる。 一方、リチウムイオン伝導に優れる硫化物ネットワークにスペーサーとしてオリゴマーを導入し、新規なハイブリッド電解質の合成を試みた。P_2S_5とPEG_<400>から合成したハイブリッド材料にLi_2を添加して得られた電解質は、従来のPEO系ポリマー電解質と比較して、リチウムイオン伝導がポリマー鎖のセグメント運動からデップルしており、シングルイオン伝導性が示唆された。ガラス転移温度は200℃から0℃以下に大きく減少したが、室温での導電率は10_<-6>/cmと低い値を示した。ハイブリッド電解質の導電率向上のためには、キャリアであるリチウムイオン濃度を増大させる必要のあることがわかった。
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