研究概要 |
付加体浅部としての研究対象地域である,三浦・房総半島のテクトニクスおよびセッティングを明確なものとするために,構造地質学・年代学・古地磁気学的な検討を行った.その結果この地域の付加年代は,6.8-4.2Maに限定され,その年代範囲中に丹沢の衝突・被覆層の堆積開始が起こったことが明らかになった.さらに本付加体は,現在の四万十帯とほぼ平行に配列していたことも明らかになった.これらの結果は,国際誌「The Island Arc」にすでに受理され,本年6月に掲載される. また本年度は,昨年度得られた付加体浅部における変形や物性ファブリック変化を顕微鏡観察等組織学に対応させること,付加体深部におけるそれらとの比較を行った.その結果,付加体浅部における変形では,剪断面上に形成されたガウジが上盤に向かってインジェクションをしている産状が多く認められ,付加体形成に伴う高間隙水圧の存在が確かめられた. 深部付加体が露出する地域では,昨年度から引き続き,堆積物の物性測定や変形様式の把握を行ったほか,温度条件を決定するために従来の輝炭反射率を用いた温度構造解析や,磁性鉱物の続成を用いた解析の手法開発を試みた.その結果,種子島地域において温度構造を約80℃切る順序外スラスト(OST)が認定された.OSTは,付加体形成に重要な役割を担っている断層であることから,来年度明らかにする予定である,この断層の変形に対する物性やファブリック変化の様式は,極めて重要になると考えられる.
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