研究概要 |
成体無尾両生類の腹側皮膚や膀胱は,抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone : ADH)による調節を受けて水代謝を行う重要な器官である。これらの水代謝調節にはアクアポリン(aquaporin : AQP)と呼ばれる水チャネルの関与が想定される。これまでの研究で,アマガエル腹側皮膚からクローニングされたAQP-h2およびAQP-h3は,腹側皮膚ではADHの作用で顆粒細胞のアピカル膜に輸送されることから,これらのAQPはカエルのADH調節性AQPであることを明らかにした。カエルは変態過程でその生活様式を水中から陸上へ変えるが,腹側皮膚におけるAQP-h2およびAQP-h3は陸上に進出する時期(Gosner Stage 42)から発現し始めることを明らかにし,これらAQPが陸上生活への適応に重要な役割をもつことを示した(J.Membrane.Biol.199:119-126,2004)。また,AQP-h2は膀胱にも発現し,顆粒細胞の小胞に局在している。in vitroにおける膀胱の短時間ADH処理でAQP-h2はアピカル膜へ輸送されること,その輸送過程でAQP-h2のリン酸化が関与することを明らかにし,膀胱尿からの水の再吸収に重要な役割をもつことを示した。さらに,各種水適応様式(樹上生,陸生,半陸生,水生)のカエルについて,全種の腹側皮膚にAQP-h3のホモログが存在すること,全種の膀胱にはAQP-h2ホモログが発現するが,腹側皮膚では樹上生種および陸生種に限定されることを明らかにし,AQPアイソフォームの発現パターンと水への適応との関連性を示した(Ann.N.Y.Acad.Sci.1040,2005)。
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